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コラム「SAYURI USHIO の NY 進出物語」(ステップボーンカット)

  • メディア:tokyo Fashion Edge 10
  • 掲載日:2015年7月30日(木)
  • ピックアップ:SAYURI USHIOのNY進出物語

TOKYO FASHION EDGE 10

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step bone cut
ステップボーンカット
sayuri ushio
小顔カット

一般社団法人 日本小顔補正立体カット協会 代表理事、ヘアサロンTICK-TOCK(チックタック)を数店舗展開、クリエイティブなフォト作品を創り出すアーティスト...さまざまな顔をもつ日本のトップスタイリストSAYURIUSHIO(牛尾早百合)が、いよいよ本格的にNY進出に乗り出そうとしている。

 TICK-TOCK Model(大阪・アメリカ村)、TICK-TOCK Tor-West(神戸)、TICKTOCK ParadimeとAirline(姫路)、学生に特化したアカデミーサロンColette(大阪・神戸・姫路)等々、全7店舗を運営しているサロンチェーンのオーナーであるSAYURIは、東洋人独特の平面的な骨格を、ヘアカットすることで立体的な西洋人の骨格に近づけるという手法、ステップ・ボーン・カットを教育カリキュラムとして開発し、ヘアカット技法としては世界でも稀な特許を取得した。

 彼女は経営者としての考え方をこうまとめる。「ヘアスタイリストの方たちが美容室で働く目的は、つまりは『売れる美容師になる』。これにつきます。そのためにはどうしたらいいのか?技術習得までの時間が短く、カリキュラムが明確でぶれないこと。それから見習うことができる先輩がいることなんです。TICK-TOCKでは効率的な早期技術習得、生産的な施術時間短縮、独創的な他店との差別化をステップ・ボーン・カットによって実現できています。これが企業として高い時間単価と高収益につながっているのです」。

 彼女はステップ・ボーン・カット誕生のいきさつについて「日本人美容師は、一生懸命練習して高い技術を持っているのに、長時間働いてかわいそうという見方をされています。一方、ヴィダル・サスーンにはじまった西洋人向けに開発されたカットの限界も感じるようになりました。日本人をはじめとするアジア人が本当に美しく見えるカット技術はどんなものなのか...私の試行錯誤がはじまったのです」と語る。そうして開発されたステップ・ボーン・カットを彼女は最初、自身のサロンだけで行っていた。

 ところが、2010年の10月に転機が訪れる。

 SAYURIはフォト作品によるアートをライフワークにしており、アートへの情熱は彼女の核となる部分でもある。少女時代に漫画家になりたかったという彼女は確固たる自身の世界観を持つ。今でこそ有名になったシルク・ド・ソレイユを1987年にNYで友人のアメリカ人カメラマンにたまたま誘われて観たときには、強い衝撃を受けた。1990年のロンドン公演、1992年の東京公演も1人で観に行くほど夢中になった彼女は、この衝撃が今も自分に深く根付いていると感じている。実はシルク・ド・ソレイユはわずか20人から始まったストリートパフォーマンスだった。やがてNY進出の準備に入るとき、この街角から少人数ではじめ世界に広がる、という構図が彼女の意識に強く残っていたようだ。

 この、ライフワークとしてのフォトアートにおいて、SAYURIは数々のフォトコンテストで受賞した。そして単なる作品撮りだけでなく、世界のあちこちの街角で生きる人々を感じるままにカメラに収めた。美しさとは、美容師という仕事とは、私たち日本人美容師の役割は...さまざまな想いが頭をよぎり、「日本人美容師ってなんて素晴らしいんだろう」。そんな結論に達すると、この想いをどうしても伝えたくなった。

 2015年、SAYURIは世界中で創作した作品をまとめたART本を出版した。世界6カ国13都市で同時発売された『FORJAPANESEHAIRDRESSERS~日本の美容師たちへ』は彼女からの日本の美容師への応援歌だ。

 これがひとつの転機となる。

 出版以来、美容業界誌での取材が増え、ステップ・ボーン・カットを紹介する機会は増えたのだが、真意が伝わらないまま断片的に真似される場合、正確な効果が出ず技術への不信感につながってしまうことが危惧された。これでは美容師がこの技術を使って誇りを持ってチャージを上げる結果につながらない。そう感じた彼女は、特許で技術を守ることにした。また、それまではステップ・ボーン・カットは自身のサロンでだけ行っていたのだが、この技術を取り入れて単価を上げ、それがスタッフやお客さまの満足度を上げているという事実が噂となり講習依頼が殺到した。そこで協会を立ち上げてアカデミーを開き、現在では基礎コース、テクニカルコース、マスターコース、講師コースと完成度の高いセミナーが提供できる環境が整っている。セミナー事業は好評を博し現在TICK-TOCKのさらなる急成長の柱となっている。

 そんな中、彼女の中でふともう一つの想いが浮かび上がる。ステップ・ボーン・カットは確かにアジアの女性が美しく見えることを願って開発した技術だけれど、欧米人に対してはどんな価値を提供できるのか? ステップ・ボーン・カットが正しく行われるように専用シザーや、水ではなくフルボ酸配合のローションを専用カットローションとして開発したことがもっと多くの付加価値を提供できるのではないか?

 少なくともこのローションが髪に優しいのは世界共通だ。またステップ・ボーン・カットの今までにないまったく新しい技術を応用して、欧米人のヘアカットにもイノベーションを生み出せるのではないか? 新たな世界基準の試行錯誤が始まった。

 ステップ・ボーン・カットのフォームを目の当たりにしたアメリカ人美容師たちの多くは「まるでYOGAや太極拳のようだ」という感想を持つ。全身の力を柔らかく逃がし、余計な力を加えず地球の引力で切る。別名スイングカット。専用カットローションで髪に命を与え、余計な力を加えずカットすることで生まれるフォルムは柔らかくスイングし、髪とその人がぴったりと調和するヘアデザインを実現する。

 この動きや軽さの出るヘアデザインが彼らを惹きつけ、いま世界基準の付加価値が生まれようとしている。

 SAYURIは言う。「ヘアスタイリストになりたてのころは、誰でも自分の技術で人を美しくしたい、そう思っています。また、なりたてのころはアーティストとしての自分の感性に磨きをかけて、美を提供したい、そうとも思っているんです。ところが教える先輩によって違う一貫性のないレッスンが長時間続き、自分はいつ完成するのかという疑問がわいて、いつしかヘアカットはお金をもらって生活する手段だけになってしまう。しかもコンビニの数よりヘアサロンの数の方が多いという過当競争で、価格のディスカウントが当たり前になってきています。私はヘアスタイリストにアーティストとしての誇りをもってほしい。自信をもって高額チャージできる存在でいてほしい。この願いは日本人ヘアスタイリストだけでなく、海外のヘアスタイリストに対しても同じだと気づいたんです」。

 SAYURIUSHIOブランドのアメリカ進出を考えたとき、最初に思ったことは、彼女の美的感覚に衝撃を与えた、あのシルク・ド・ソレイユが少人数のストリートパフォーマンスから始まったことだった。彼女はこれまでステップ・ボーン・カットの可能性を試すため何度もNYに来ているが、彼女にとってのNYはマンハッタンというより、いつもブルックリンだった。ブルックリンは最近でこそブームの波にのって、第2のソーホーと呼ばれているが、彼女が来はじめたころは、まだ女性一人で歩くのは危険な、巨大ねずみが徘徊するという都市伝説さえある場所だった。ただ彼女はこの場所の不思議なエネルギーに強く惹かれた。その昔『切り裂きジャック』も知らず東ロンドンのホクストン・スクエアに魅了されていたように。

 そうして彼女は魂の導きのままに、第一号のステップ・ボーン・カットNY進出店をブルックリンにしようと決心する。タイミングよく長年のつきあいであるNYの友人たちとの再会が重なり、ブルックリンの最人気界隈に店舗スペースを確保するサポートが得られたり、クリエイティブな実験の場の誕生に現地のアーティストたちが仲間入りしようとしている。ブルックリン物語の始まりだ。

 ところが、素敵な冒険物語はこれだけに終わらない。

 独特のビジョンと感覚の持ち主であるSAYURIは、ブルックリンとは真逆の、NY郊外の高級住宅地グリニッチにあるホテルで、運命的な出会いをする。アメリカの最富裕層は、毎年冬の寒さを避けて暖かいフロリダへと移るのだが、夏には避暑に東海岸北へと戻ってくる。彼らは自身の船で移動するため、この高級ホテルのデラマーはハーバーに面している。ホテル近くには東のロデオドライブ街といわれるブランド店が立ち並び、世界的に著名なゴルフコースのデザイナーであるピート・ダイがデザインしたパウンドリッジ・ゴルフコースと、同じアメリカとはいえ、ここではブルックリンとは異なる別世界が繰り広げられている。このホテルの広報を手がけている敏腕PRウーマン、リサ・ジョンソンと彼女は出会ったのだ。話し合えばあうほど、リサは彼女のアーティストとしてのスター性を確信し、カット技術はひとまず置いておいて、彼女自身を売り出すことをアドバイスした。彼女との連携で大掛かりな戦略も現在進行中だ。